フルボ酸
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フルボ酸

地球環境と生命の維持に必要不可欠な天然有機物

フルボ酸は、腐植土に含まれる「腐植物質」と呼ばれる天然有機物の一種です。カルボキシ基を非常に多く含有し、水溶性で官能基に富むことから高い生理活性を示すことで知られています。この特性から、植物への養分の供給や土壌の水分保持など、植物の生育において重要な役割を果たしています。

フルボ酸の原材料「海洋性完熟土」

太古に海底で堆積した海藻や魚介類、動植物の遺骸が長い年月をかけて分解・発酵を繰り返し、腐植化して熟成したものが海洋性完熟土です。当研究室では、推定500万年~数千万年前、海底にあった地層が地殻変動により隆起して現れた腐植土層から成る海洋性完熟土を使用しており、この土は地質学的に極めて稀有な存在と言われています。

海洋性完熟土(採掘直後)

海洋性完熟土(自然発酵)

海洋性完熟土は、フルボ酸をはじめミネラルやアミノ酸などの成分を豊富に含んでいます。さらに均質であるため、安定して採掘が可能です。一方、森林や田畑などに存在する腐植土は、草木や落ち葉など植物プランクトン、土壌微生物などの有機体から得られ、多くが腐植の進行過程であり、腐植と非腐植から成る不均質な状態で、海洋性完熟土とは性質が大きく異なります。また、海洋性完熟土は、地下20~30mから採掘してるため環境汚染の心配がなく安全性にも優れています。

海洋性完熟土の成分

フミン物質

フルボ酸

ミネラル

カルシウム・マグネシウム・ナトリウム・亜鉛・マンガン・ケイ素・鉄 他

アミノ酸

アルギニン・リジン・ヒスチジン・フェニールアラニン・イソロイシン・ロイシン・バリン・アラニン・グリシン・グルタミン酸・セリン・スレオニン・プロリン・アスパラギン酸・β‐アラニン・γ‐アミノ酪酸・オルニチン・ヒドロキシリジン・フォスフォセリン 他

ビタミン

ビタミンA・ビタミンB1・B2・B6・B12・ビタミンE・葉酸

酵素

リパーゼ・ウレア―ゼ・アルコールデヒドロゲナーゼ 他

官能基

カルボキシ基・フェノール性水酸基 他

腐植物質とは

植物の遺骸が微生物などの作用で分解する過程で生じ、長い年月をかけて生成される物質です。酸およびアルカリに対する溶解性の違いにより以下の3つに分類されます。

腐植物質の水に対する溶解性と分類

腐植物質の書類 水に対する溶解性
アルカリ性 酸性
フルボ酸
フミン酸 ×
ヒューミン × ×

フルボ酸:アルカリ性から酸性まで、どんなpHの水(pH 1~14)にも溶ける

フミン酸:アルカリ性の水に溶け、酸性の水で沈殿する。

ヒューミン:アルカリ性および酸性、どちらの水にも溶けない。

フルボ酸は、フミン酸と比べて分子量が小さく、水酸基(‒OH)とカルボキシ基(‒COOH)の割合が多いため水溶性が高くなっています。当研究室のフルボ酸エキス※1はpH2.8前後の酸性水です。分析の結果、フミン酸とヒューミンは含まれておりません。(千葉工業大学調べ)

フルボ酸の定義

国際腐植物質学会(IHSS)が提示した「IHSS法」による分画・抽出を行い、酸や水に可溶な物質をフルボ酸画分としています。当研究室では、腐植土より直接フルボ酸を抽出することに成功しました。フルボ酸は原料や由来により化学構造が異なるため、IHSS法による分画と、得られたフルボ酸官能基の分布により、フルボ酸であることを確認しています。

※フルボ酸画分であれば上部4つのような波型スペクトルを示す

分子構造

図1.土壌フルボ酸の平均化学構造モデルの例(Shin&Moon,1996)
ーOH:フェノール性水酸基 ーCOOH:カルボキシル基

フルボ酸は、図1のような構造を持つ分子の集合体で、ひとつの分子内にフェノール性水酸基(‒OH)とカルボキシ基(‒COOH)を複数持つ構造をしています。フェノール性水酸基(‒OH)は、抗酸化作用に関係する構造で、この構造をひとつの分子内に複数持つものを総称して「ポリフェノール」と呼びます。このポリフェノールは、フェノール性水酸基の抗酸化作用によって、細胞の老化などの原因となる活性酸素を除去する働きがあります。一方のカルボキシ基(‒COOH)は、お酢の主成分である酢酸(構造式:CH₃‒COOH)に含まれる構造で、酸味の要因である酸としての働きをして、抗菌作用を示すとともに、疲労回復や肌の肌理(きめ)を整える美肌効果などがあると言われています。

※1 「フルボ酸エキス」とは天然土壌から阿蘇の伏流水を使用して抽出した、エキスです。
エキス中には、フルボ酸、酵素、アミノ酸、ビタミン、ミネラルを含みます。